撮影に使用するカメラを選ぶ




当方が使用しているカメラは、すべて「それなり」なものばかりです。ごつい一眼レフ、ごついレンズは使いません。当初は、こういう撮影は高性能な一眼レフだろうと思ってスタートはしましたが、大きさ、重量、高価な望遠レンズの購入を考えると、色々と厳しい要素が多いです。結果、一眼レフを手放し、コンデジまたは小型のミラーレスになりました。そんな経験を踏まえて、生き物たちの同定できる写真、表情が分かる写真を撮るには、どんなカメラを買えば良いのか説明していきたいと思います。






  ■望遠がきくこと (全ての生き物)

動かない置物の撮影ならいざしらず、野生の生き物に近づいて撮るのには限界があります。まず、鳥や動物は望遠があったほうがいいのは誰でも分かると思います。さらに、虫なども望遠のほうが有利な事が多いのです。つい、虫ならば小さいから、マクロ機能(マクロレンズ)で近づいて大きく撮影すればと思いがちですが、トンボやチョウは近づくと大抵逃げられますし、ハチ類は安全性から距離を保ったほうがいいです。また、マクロ撮影では立体感が非現実的になります。記録撮影としてマクロ機能が生きるのはテントウムシやアブラムシなどの本当に小さな虫です。さて、望遠がきくという事は、つまり焦点距離が長い(画角が狭い)こと。宣伝広告でありがちな何倍ズームという言葉では何を基準の倍率か置き去りになっているから怪しげなのです。必ず焦点距離に注目しましょう。こんな専門用語では感覚がつかめないという場合は、まずはカタログなどの仕様書(性能など細かく書いてあるもの)を見てみましょう。レンズの部分に、

    35mm判換算  24mm-1200mm

などと書いてあるはずです。その一番最後のmmの値が大きいほど望遠がきくことになります。上記の例の1200mmなら、月のクレーターも大きく撮れるくらいです。まず、生き物撮りなら、何を撮るにしても600mmは欲しいです。

     ■推奨
    まずは換算焦点距離600mm以上のカメラを探したい。
    野鳥なら最低でも800mmは欲しい。







  ■最大望遠で近距離撮影ができること (虫など)

虫などを撮るなら、上記での望遠性能に加え、その最大望遠でどのくらいの近距離で撮影できるか。つまりテレマクロ性能も重視します。これは野鳥撮りだけなら無視して良いです。さて、またカタログの仕様表を見てみましょう。そこに「最短撮影距離」とか「合焦範囲」とあるはずです。その値のT端または望遠端が1m〜2m程度のものがいいです。3mになると小さな虫を視認するのが難しくなり、厳しいです。虫なら1〜2m離れていれば逃げられずに撮れる事が多いので、この性能があれば助かります。なお、カタログ値は実機と少し差異があるため、カメラ屋などに行き、売り場に置いてあるカメラを実際に手に取り、自分の撮りたいものを想定して試し撮りすることをオススメします。


     ■推奨
    虫ならT端(望遠端)の最短撮影距離1m〜2mのカメラを探したい




  ■画素数が低いこと

カメラを知らない人は、おや?と思うでしょう。これは数字上の話で、絶対的ではない話なのですが、画素数が多いのと高画質は必ずしもイコールではない事が多いのです。少しひねって言えば、画素数は脆い指標、まやかしの数字と言えなくもないのです。さて、カメラ内部のセンサーを方眼紙に置き換えて話をします。まず頭に方眼紙のマス目を思い浮かべてください。マス目ひとつが1画素です。

       
  ※解説を簡便にするために実際の素子配列を無視して説明します

そのセンサーの画素数を多くしたいのなら、この様にマス目を細かくします。
  

しかし、ただ単純にマス目を小さくすると、画素ひとつの受光能力が落ちて不鮮明な写真になります。人間が薄目で見ると、ぼやけて景色が見えるのと同じです。これを改善するには技術力の向上を伴わないといけないのです。しかし、ユーザーは画素数という数字に食いついてくれるため、技術が置き去りになって単純に画素数ばかりが増やされる事が多いのです。つまり、画素数だけを上げたカメラは大伸ばしプリント、拡大には不向きになります。メーカーの「○○○万画素で高画質」なんて臭いセリフに乗ってはいけません。それは、車でいうと最高出力にばかり目がいっていることになります。車はトルク特性やシャシー、乗り心地やハンドリングも大事だと言えば理解いただけるでしょうか。何事もバランスです。

もし、この問題を技術なしに簡単に解決するには、センサーのサイズを大きくすればいいのです。センサーサイズを大きくすれば、画素ひとつの能力を維持したまま画素数を増やし、精細な写真が撮れます。

  

しかし、こうすると大きな問題が浮き上がってきます。重量と価格です。センサーを大きくするとレンズも大きくなり、ボディも大きくなります。そうなると一気に価格が跳ね上がります。たとえば600mmレンズを搭載したコンデジは数万円ですが、大きなセンサーを持つ一眼レフで600mmレンズとなると、レンズだけで安くても20万円ほどで、いいレンズだと100万円もします。総重量も3〜4kgとなり、持ち歩くのが大変です。なので、センサーが小さなカメラで、かつ画素数が低いほうが扱いやすい性能と言えるのです。しかし世は悲しいことに高画素に向かっており、コンデジでも1600万画素〜2000万画素という過剰な画素数が普通になっています。なので選択肢の幅は無いかもしれませんが、まず生き物撮りの第一歩としては、安価な1/2.3インチセンサーあたりのカメラ(コンデジ)で、画素数が低く抑えてあるカメラがあれば、カメラ選択の大きなキーにしていいと思います。

     ■推奨するセンサーサイズ
    安価に望遠を求めるなら   1/2.3インチ、1/2インチ
    やや高価でもいいなら     1インチ、4/3インチ
    かなり高価でもいいなら    APS-Cサイズ




  ■解像力が高いこと

いかにスッキリ撮れるか。これは判断が難しいかもしれません。上記のセンサーと画素数は指標的な話であり、カメラは総合力なので実際の写り具合はカタログ値からは読めない事もあります。そこで、最終判断としては実機で撮影して、よく解像できているカメラか、写真で判断します。私はよく、お店にSDカードを持参し、店員さんに断って、数機種のカメラを同条件で同じものを撮影し、どのカメラが細かな部分まで解像できているかを調べます。




  ■オートフォーカス(AF)が速いこと

生き物が相手ですから、動いている状態を撮る事も多々あります。そこで素早くピントを合わせてくれるカメラが必要になります。これも実機でないと分かりません。メーカーの「高速AF0.1秒!」などというセリフは無視したほうがいいです。さて、お店に行ってカメラのシャッターボタンを半押ししてみてください。画面が一瞬モヤッとなって、ピタッとピントが合うまでが速いカメラを選びましょう。なお、必ず望遠状態で試してください。




  ■その他

カメラの事が少し分かってきたのなら、フォーカスの精度、発色(色温度)傾向、ダイナミックレンジ、色収差の程度も確認します。




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